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溶連菌感染症について

俗に「ようれんきん」と言われる病気です。

溶血性連鎖球菌について

原因

A群連鎖球菌というバイ菌が原因で溶連菌感染症をおこします。
この菌は、大きく分けて上気道感染(扁桃炎)と皮膚感染症(膿痂皮)を引き起こす菌です。
他にも、昔から「猩紅熱」、「丹毒」を起こす菌としても知られています。
いくつかのタイプに分類できます。

菌の特徴

グラム陽性球菌で(少し専門的ですが)、鎖がつながっているように増殖します。
それが理由で連鎖球菌といわれています。

この菌は、培養するときに血液を混ぜた寒天培地で培養します。
その培養の時に、増殖した菌の周囲の培地の血液を溶血させて色がなくなるかどうかで、区別されます。
β溶血(完全溶血)、α溶血(緑色または部分溶血)、γ溶血(非溶血性)に分かれます。
いわゆる、「ようれんきん」はβ溶血性連鎖球菌を指します。

そのβ溶連菌は細胞壁の多糖体により、20以上に分類されて、AからTまでの文字が割り振られています。

さらに、溶連菌は細胞表面の線毛のM蛋白抗原に基づき80を超える血清型に細分されます。
ちょっとこれからは、専門的な記述になりますが、M蛋白質をコードしているA群連鎖球菌のemm遺伝子配列を利用してM型の分類が進んでいます。
M型は100以上に分類されます。このM型とA型連鎖球菌の疾患が関連するようです。
普通、扁桃腺が腫れて溶連菌といわれるタイプの溶連菌は、皮膚感染症を起こすことはまれです。
また逆に皮膚感染症と関連のあるM型の溶連菌は咽頭炎、扁桃腺炎を起こすことがまれなようです。
さらに、「咽頭」菌株のうち腎炎を起こすのは少数で、むしろ「皮膚」菌株の方がはるかに多く腎炎を起こすようです。
急性リウマチ熱をおこすのは、逆に「皮膚」菌株では皆無で、「咽頭」菌株の方が数種類急性リウマチ熱と関係しているようです。

疫学

A群溶連菌の自然宿主(自然界で存在する保菌者)は人間です。 すべての年齢の人間に対して病気を起こしえますが、新生児は母親由来の抗体により病気になることはほとんどありません。 一番多い感染者は、3歳すぎの幼児から学童にかけてです。

感染経路

人から人への感染経路は、咳などにより空中を漂う唾液と鼻腔分泌物によってひろがります。
特に密集接近する場合に感染しやすく、学校や家庭で感染する頻度が高くなります。
また、感染しても適切な抗生物質投与を受ければ治療開始後24時間で人に感染する可能性は無くなります(要するに、薬飲んで1日熱なければ学校OK)。

一方、トビヒの形で発症する場合は、夏場に多く見られます。 皮膚が多く露出され擦過傷や虫刺されが起きるときに発症しやすいです。 ただ、溶連菌は無傷の皮膚を貫通して侵略できないため、蚊に刺されたところや外傷や火傷の部位から侵入するようになります。 また感染経路は皮膚の場合接触感染で広がります。指爪および肛門周囲部は溶連菌が常在しやすく、トビヒの原因になることもあります。

劇症型溶連菌感染症

近年劇症型の溶連菌が報告されてきています。 菌血症(血液の中に溶連菌が入って全身に広がる状態)、連鎖球菌性トキシックショック症候群(連鎖球菌の作り出す毒素でショック状態になる)、 壊死性筋膜炎(皮膚の下の軟部組織と皮膚の広範囲の限局性壊死)などです。 こういう病態を発生するのは、年少者と高齢者の両極端の人が最もおこしやすいです。

小児でこういう病気にかかる危険因子は、「水痘」です。 他に危険因子として、糖尿病、慢性肺疾患、慢性心疾患などです。 こういう劇症型の溶連菌感染は、通常の咽頭型溶連菌感染に続いて起こることはまれです。

溶連菌感染症のまとめ

★原因            A群β溶連菌です。
★伝染経路         飛沫感染と接触感染です。
★かかりやすい年代    3歳すぎ―学童です。
★引き起こす病気     咽頭炎、肺炎、中耳炎、急性腎炎、血管性紫斑病、リウマチ熱、
                劇症型連鎖球菌感染症(トキシックショック症候群、壊死性筋膜炎、
                菌血症など)
★診断            特徴的な皮膚の細かい発疹、いちご状舌、咽頭の発赤、
                迅速抗原検出キット(検出率は80-90%)
★治療            抗生物質(ペニシリン、エリスロシン、クリンダマイシンなど)
★予防            手洗い、うがい、ワクチンの開発(動物実験の段階ですが)