尼崎市,小児科,JR尼崎駅前,内科,アレルギー科,吉村クリニック,小児科専門医

熱性けいれんについて

熱性けいれんって?

子供が熱を出したり、熱の上がりはじめにおこすけいれんです。
急に意識が無くなり、全身を硬直させたり、全身をガクンガクンとさせ、一転凝視したり、目が白目をむくようなけいれんです。

とりあえず熱性けいれんの時はどうすればいいのでしょうか?

1.まず、あわてないこと!
2.時計を見て何時何分からけいれんし始めたか確認する。
  どんな形のけいれんだったか覚えておいてください。
3.子供さんを、床など決して落ちないところに寝かせる。
4.口の中に、お箸や指などを突っ込まない。
5.口の中に、食事や飲み物がある場合、顔を横に向けて喉の奥に入らないようにする。
6.ほとんどのけいれんは、1分以内に治まってくるので、様子観察し、むやみにゆすったりしない。
7.5分〜10分以上けいれんが続けば救急車にて医療機関を受診する。
8.けいれんが治まってくれば、熱さましの坐薬や氷枕で熱を下げ、
  けいれんの予防薬(ダイアップ坐薬)があれば使用する。
 

「この子が死んでしまう!」と親はあわてて救急車を呼ぶことが多いと思います。
親とすれば、非常に長い間けいれんしているように感じても、実際は1分以内が大半です。
ただ、大体5分以上けいれんが続く場合は、救急車で医療機関を受診したほうが無難です。

てんかんと熱性けいれんは同じですか?

てんかんは、熱と関係無しに、脳の一部あるいは全部が電気的に興奮する状態です。
全身のけいれんのこともありますし、意識が無くならないけいれんのこともあります。
熱性けいれんは、あくまで熱の上がり際か発熱に伴って起こすけいれんです。
熱性けいれんは、大体6歳頃(小学校入学する頃)になると、発作が見られなくなります。

熱性けいれんは放置しておくとてんかんに移行するのでしょうか?

厳密に言うと、放置しておいたからけいれんになるというのではありません。
ただ、熱性けいれんの人は、けいれんを普通の人より起こしやすいので、
てんかんになる確率は高いです。
だいたい、一般の人のてんかんを発症する割合は0.5〜1%くらいですが、
熱性けいれんの人がてんかんを発症する割合はおよそ4〜6%で、
一般の人の6〜8倍確率が高くなります。
現在、熱性けいれんとてんかんにおける責任遺伝子の研究が進められています。
今のところ、熱性けいれんからてんかんへの移行を阻止できる有効な手段はありません。

どういう場合熱性けいれんがてんかんに移行するのでしょうか?

色々な報告がありますが・・・
けいれんする前から、神経的な異常が認められる場合(発達遅延、麻痺等)
非定型発作(部分発作や繰り返し起こす発作や長時間続く発作の場合)
親族にてんかんの患者さんがいらっしゃる場合
などの時は、てんかんに移行しやすいといわれています。

熱性けいれんは、繰り返し起こすと癖になりませんか?

一般的に、1回だけの熱性けいれんで終わる方が約60〜70%位です。
残りの方は、2回以上おこします。頻回におこす方は約10%弱です。
予防の坐薬を上手に使えば、ほとんどの方はコントロールできます。

熱性けいれんの治療・予防薬(坐薬)について教えてください。

予防の坐薬ができてから、再発する方は激減しました。
予防の坐薬は、ジアゼパム坐薬(商品名はダイアップ坐薬)です。
4mg、6mg、10mgの3種類があります。
使用量は、0.5mg/kg、つまり体重10kgの方で、およそ5mgほどを1回に使用します。
風邪症状があり、熱っぽくなったら、予防的にすばやく使用してください。熱の上がり際に使用すると効果大です。8〜12時間後に、熱は無くてももう一度坐薬を使用しておいてください。それで、けいれん予防の有効血中濃度がほぼ数日得られます。ほとんどの熱性けいれんは、発熱後24時間以内に起こります。熱の出る初日が大事です。
坐薬の副作用は、眠気、軽度の一時的なふらつき、興奮、鎮静などです。
熱さましの坐薬とけいれん予防の坐薬とどちらから使うかですが、一応けいれん予防のダイアップ坐薬を先に使用してください。迷った場合は、同時に2種類(熱さましとダイアップ)を使用しても大丈夫です。
ただ、少しだけダイアップの吸収率が悪くなりますが・・・

余談ですが、アメリカ、カナダでは、「Diastat」という、ジアゼパムのゲル状の注腸薬が販売されています。
注射で使用する液状のジアゼパムでは効果一番ですが、血中濃度上昇が急激過ぎて呼吸抑制の危険性があり、坐薬のジアゼパムでは、溶解に時間がかかりすぎてけいれん抑止効果がいまひとつです。
ゲル状の「Diastat」は、即効性があり、呼吸抑制が見られない薬品です。この薬のおかげで救急車を利用する回数が減少したそうです。
ぜひぜひ、ゲル状のジアゼパム注腸薬の販売を願ってやみません!!
製薬会社の方よろしくお願いいたします。この「Diastat」はてんかんのコントロール困難な方にとっても福音になると思います。

熱性けいれんの後、脳波検査は必要でしょうか?

けいれん直後に脳波を調べてみても、あまり治療とは結びつきません。
むしろ、けいれんの後、1ー2ヶ月して脳波検査を受けられることをお勧めします。
熱性けいれんの場合、脳波異常があっても診断は熱性けいれんです。
ただ、脳波検査によって、他の脳の異常が見つかる場合も少なくありません。

熱性けいれんと脳炎・髄膜炎と区別はつくのでしょうか?

けいれんの状態からは、区別はつきません。
経験的に言いますと、脳炎の場合は、顔色も悪く、けいれんの前から意識状態に異常が見られます。
たとえば、傾眠傾向が見られたり、呼んでも返事しなくなり、ボーっとしたりいつもの状態と異なることが多いです。
また、けいれん前に嘔吐が見られたりします。けいれんもすぐには止まらず、5分間以上続くことが多いです。
けいれんの形も、左右非対称のけいれんだったり、発熱してから1日以上たってからのけいれんだったりします。
そういう場合は小児科を是非受診してください。

熱性けいれんの場合は、今まであそんでいた子が急にけいれんするといった感じです。
ほとんどが発熱直後で、左右対称性で5分以内にけいれんが止まり、けいれん後目覚めてから意識がしっかりしていればまず問題ないと思います。
 

うーんと、こんなところでしょうか・・・質問があればメールでどうぞ。