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発熱について

夜に急に熱が出た時・・・「さぁ、どうしましょう」ってあせりませんか?
「熱で頭が馬鹿になる」とか、このまま放置してもいいものなのかどうか・・・迷うと思います。
今回、発熱についてお話いたします。

まず、発熱したからといってあわてないでください。発熱で頭が馬鹿にはなりません。
ただ、発熱する病気の中に頭をだめにする病気が含まれているのです。

危険な発熱

例外があります。脳の機能障害による発熱の場合41度を超えて体温が上昇します。
41度を超えて体温が上昇するときは、必ず医療機関を受診してください。
41度を超えて体温が上昇する場合は、熱射病、悪性高熱症(家族性)などで、風邪とかばい菌による場合は少ないです。
致命的な敗血症(ばい菌が全身を侵す場合)のときは、むしろ低体温になることもあるぐらいです。
ですから、くれぐれも言いますが41度までの発熱で脳細胞にダメージはおこりません!
脳細胞にダメージを与えるばい菌やウイルスの場合体温が38度くらいでもおこります。
ただ、脳細胞にダメージを与えるよう場合は、必ず重症感があります。
顔色が異常に悪い、ぐったりして意識がボーっとしている、けいれんをおこしている、ひどい頭痛がある、嘔気・嘔吐(むかむか・ものを吐く)などの症状が認められ、笑わなくなり、水分、食事を拒否し、ぐったりしてきます。

小児科の教科書(NELSON)では、熱の高さと病気の重症度は比例しないと書いてあり、むしろ高熱よりも低体温(34度以下)の方が重症で死に結びつく危険性が高いと記されています。

発熱の定義

よく患者さんに、「普段の体温が低いので、36.8度でも発熱なのです。」って言われますが、発熱の定義は、一般的には37度以上です。乳児などでは、哺乳したり気温が高いところでは容易に37度を超えますので、37.5度以上の場合発熱と考えた方がいいと思われます。

熱の出るメカニズム

さて、どういうふうにして熱は出てるのでしょうか?
ばい菌が、ウイルスが熱を出す?
いえ、本当は人間が熱を出しているのです!
あまり専門的に説明しても難しいので、わかりやすくたとえて説明します。

体の外から、ばい菌やウイルスが侵入して来ます。
すると体の防衛軍が警報を出します。「敵が侵入してきたぞ!!」って。
すると伝令が体の血液を通って肝臓を通って頭の司令室まで通報します。
頭の司令室には体温コントロール部屋があります。普段の体温もここが管理しています。

ばい菌の進入が報告されるとまるでエアコンのスイッチで温度を設定するように頭の司令部(体温中枢)で体温調整の設定を39度とかに決められます。

次に、1番目のスイッチが入って、体の表面の血管(皮膚の血管)が収縮されます。熱が出るとき一時的に手足が冷たくなって顔色が悪くなるのもそのせいです。

2番目のスイッチが入ると、全身の筋肉が細かく震えます。俗に言う悪寒、戦慄です。この筋肉の収縮により熱が発生します。体の外は血管が収縮して体温が外へ逃げにくくしてあり、体内で筋肉が収縮して熱を発生するので体温が上昇します。そして予定の体温になったら悪寒、戦慄が止まって、皮膚表面の血管が開いてひと段落します。顔が真っ赤になってフーフーいって発熱に気づくことが多いと思います。

熱が出る理由

では、なぜ発熱するのでしょう?

答えは自己防衛手段なのです。ばい菌にしてもウイルスにしても、生き残るためには人の体の中で繁殖していかなければなりません。ですから、ほとんどのばい菌やウイルスは37度で繁殖するようにできています。ばい菌やウイルスは体温が38度少し超えると急に分裂しなくなります。

体温を上昇させて敵の増殖を止めている間にとても精巧なミサイルと敵だけをやっつける賢い兵隊をトレーニングしているのです。
相手に百パーセント命中して自分の体にはダメージを残しにくいミサイルの鋳型をカンコンカンコン作るのと、敵だけをやっつける賢い兵隊を訓練するのに数日かかるのです。

そしてミサイルの鋳型が完成したら一気に大量生産して発射し兵隊を大量に動因します。すると、侵入者たちは完敗して病気が治るのです。だから、むやみに熱を下げるのは敵の思う壺です!

どうやって熱さましを使えばいいのでしょう?

熱さましの坐薬や内服薬は熱を下げる目的で使ってはいけません。
40度以上の発熱でぐったりしてきて、不機嫌となり睡眠も取れないときに、使いましょう。ほとんどの方は、熱さましを使うことにより、38度台くらいには下がると思います。

子供さんの場合は、40度が38度台に下がるだけでかなり元気になり、機嫌も良くなります。
そのときに、水分補給や軽い食事を与えてあげると眠気を催し入眠できると思います。睡眠をとって体力を回復して再び敵と戦うための体力を回復する道具として熱さましを利用してください。

熱さましを使わないほうがいい場合は?

原則として熱さましは使わないほうがいいと思います。本人が元気なら無用です。
インフルエンザ水痘(みずぼうそう)には、特に気をつけて使ってください。

以前のタイプの解熱剤をインフルエンザと水痘に使うと脳症をおこす子供さんがおられました。最近の解熱剤(アセトアミノフェン:商品名はピリナジン、アンヒバ、アルピニー、カロナール等)が一番無難な解熱剤です。

なお、熱性けいれんで医療機関にかかっておられる方は、主治医の先生と相談して上手に熱さましを使用してください。熱性けいれんの患者さんにとって熱さましは積極的に使うことをお勧めします。