尼崎市,小児科,JR尼崎駅前,内科,アレルギー科,吉村クリニック,小児科専門医

予防接種について

予防接種を受けに行って、よく言われる言葉に「今日は風邪気味だからやめておきましょう。」
とか、「体調が悪いようだからやめておきましょう。」と言われたりしませんか?
それって、本当でしょうか?

医学的にどうなのか調べてみました。少し古いですが、代表的な論文をみてみました。

(Epidemiologisches Bulletin 2005; 30: 266-276)に掲載されている論文では、

予防接種の禁忌はまれで、痙攣の既往があったり、皮膚の湿疹があったり、 あるいは、感冒に罹患しているだけで、予防接種をやめる医師が多いが、これは誤りであると断定しています。

禁忌である、あるいは注意すべき場合は、

@ワクチンに含まれている成分に対してアレルギーがある場合です。

ネオマイシン、ストレプトマイシンなどで、他には鶏卵白があります。
鶏卵白は、血液検査で卵白アレルギーがあることが禁忌の対象となりません。
卵白が食品のつなぎに入っているレベルじゃなくて、卵白そのものを摂取すると、ショックを起こすアナフィラキシーの場合のみ、ワクチンを受けてはならない対象となります。

A妊娠中は、生ワクチン接種を避けたほうがいい。

生ワクチンは、生きているウイルスですから、ウイルスの、DNAやRNAが直接母体の中に入ります。 血液中に入ったウイルスは胎盤を通って胎児の発育に悪影響が出る懸念が高いです。

逆にインフルエンザの不活化ワクチンは、妊婦さんにとって受けた方が価値があるという論文が出ています。

Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine(2010; オンライン版)によりますと、ワクチン接種で妊婦さんのインフルエンザに対する抑止効果が高まるだけでなく、 生まれてくる赤ちゃんが生後6か月までの重症になりやすい時期の罹患率が半分以下になると証明されました。

妊婦さんは、ぜひインフルエンザの不活化ワクチンを受けるべきです。

B熱性けいれんの子供さんは、予防接種問題ありませんが、打った後の処置が大切です。

よく予防接種を打った時に一過性に発熱する場合があります。
その際、熱性けいれんを起こす子供さんは、前もって解熱剤を投与したりけいれん予防の座薬を使用してけいれんを起こさないようにしてあげてください。 MRワクチンの場合は、7-12日目に気を付けてください。

C先天性免疫不全症候群の患者さんに、生ワクチンは禁忌です。

生後2-3か月以内に、数回入院が必要なほどの感染症を起こす場合は、細胞性免疫不全の可能性もありますので、 主治医と相談すべきですが、不活化ワクチンの場合は、問題ありません。

予防接種をして問題ない場合をあげますと

感冒(38.5度の発熱を伴う場合でも)、新生児黄疸、早産児、抗菌薬あるいは低用量/外用のステロイドによる治療を受けている場合でも 接種問題ないと発表されています。

逆に熱があり感冒症状の子供に予防接種して不利益を証明できた論文(エビデンス)は探した限りではありません。

最近発表されたBCGに関する論文では、逆のおもしろい証拠が出てきています。
「Effect of BCG vaccination against Mycobacterium tuberculosis infection in children: systematic review and meta-analysis.」
BMJ (Clinical research ed.). 2014;349;g4643.
この論文によりますと、 肺結核患者への曝露後感染を19%予防できることが明らかにされた。さらに、結核菌感染が認められた場合も、接種者では発症予防効果が58%あることも判明した。

つまり、結核にかかったと分かった後でもワクチンの効果が非常に高いことを示しています。
ですから、風邪気味だからとか、もう病気うつってますからとかで、ワクチン中止は無意味です。
同じようなことで、原因不明の肺炎の患者さんが、肺炎球菌ワクチンを接種していなかったので、肺炎にかかっている最中に、 肺炎球菌のワクチンを打ったら症状が改善した症例は経験しております。

また、医療機関によっては、予防接種の実施する時間帯を一般診療から切り離して実施しておられるところもありますが、以上の説明から無意味です。
感冒にかかっていても予防接種が可能なのですから。

よく聞く言葉に、クリニックに行くと風邪をもらうから別の日にちにしてもらわないと風邪がうつるのは嫌だとおっしゃる方がいます。

気を付けてくださいね。
大事なことをお伝えします。

風邪を上手にかからないと、白血病やがんになる可能性が一気に高くなりますよ!

BMJ 2005;330:1294 の「Day care in infancy and risk of childhood acute lymphoblastic leukaemia: findings from UK case-control study」

生後早くからほかの子どもたちと接触し、一般的な感染症にかかる機会がある子どもは、代表的な小児癌のひとつである急性リンパ性白血病にかかるリスクが 大幅に低い――こんな研究結果が明らかになった。 英癌研究所のClare Gilham氏らの研究で、種々の感染症に暴露する頻度と、小児の急性リンパ性白血病(ALL)の関係を調べ、 生後早い時期から、集団保育などの機会がある子どもは、ALLのリスクが半減することを明らかにし、British Medical Journal誌2005年6月4日号に報告した。

さらに、遺伝子レベルの研究で子供にとって、泥んこ遊びは免疫系を発達させるうえで非常に大事だという論文もあります。

Olszak, T. et al. Science http://dx.doi.org/10.1126/science.1219328 (2012).

潔癖症気味で風邪を極度に嫌うと本当に癌になりますよ。

以上をまとめて考えると、風邪は上手にかかった方がいい。予防接種は風邪をひいていても大丈夫ですから、 予防接種の日を設けるのはナンセンスであり、子供の予防接種を受ける機会を逃してしまい、医療従事者としては望ましくない行為だと思われますがいかがでしょう?